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気になることば

BERC常務理事 中村暢彦

 気になる言葉がいくつかある。半年ほど前の話になるが、何気なくテレビを見ていると、それは結婚したばかりのある男性芸能人へのインタビューを場面であった。めでたいことである。ただ当人の発言が少し気になった。「相手の方とは以前からお付き合いさせていただいており、(略)・・・」。うーん、なんか変だ。この「・・・させていただいて」というのは、最近よく聞く。謙譲語だと思うのだが、果たして誰に対してへりくだっているのか。相手の女性?そんなわけではないだろう。ファン?違うだろう。「以前から付き合っており・・・」の方がすんなりとくる。5年くらい前から妙に使う人が増えたように思う。社会人でも、取引相手でもない他社の人に対し、「私は〇〇社でこういった仕事をさせていただいています。」と使っている人に出くわす。そう思っていたところに、2年半ほど前に出版された内館牧子の書(注1)を読み、同じ考えで意を強くしたものだ。
 「・・・させていただいて」が1つ目とすると、2つ目は「お申し出ください」だ。製品に不具合が出て、回収しなくてはならない事態に陥った時によく出くわす。実際に自分がいる会社でもよく使われていた。そうした会議の中で、「お客さんに申し出てくださいというのは、ちょっと上から目線ではないの?」と何度か発言した記憶があるが、採用はされなかった。確かに新聞やホームページに載るリコール通知の表現は、押しなべて「お申し出ください」である。そうした中、NHKアナウンス室編の気になることばについての本(注2)に出会った。そこには「申す」は歴史的に謙譲語以外の使い方があって、「言う」の改まった用法もあるとのこと。だから「問題なし」と断じている。そうか、間違っていないのか、とは思いながらも何か釈然としない。言葉の意味は歴史とともに変化する。「やばい」というのも、以前だったら否定的な意味を持っていたが、現在は素晴らしいという意味にも使われているようだ。英語のterrible、awfulなんかもそうだろう。ただ、「過去に使われていたから」が判断材料というのもちょっと・・・
 さらに、最近は数が減ってしまった喫茶店でのこと。店の人がオーダーをとりに来てアイスコーヒーを注文すると、「アイスコーヒーでよろしかったでしょうか」との言葉。おいおい、確認するのはわかるけれど、今頼んだばかりなのに「よろしかったでしょうか」とは何事か?気が弱いので口には出さないが、とても気になる。確かに英語でも、謙譲語的用法に過去形を用いることがあるらしいが、同じようなことなのかしらん。「アイスコーヒーですね」と言われた方がどれほど気分は良いものか。加えて同じ場所ではなかったが、注文した品を店員が持ってきて、「こちらアイスコーヒーになります。」と。どう見てもアイスコーヒーに見えるのだが、実は違うもので、30秒ほどすると自然にアイスコーヒーになるのか・・・と皮肉を言ってやりたくなる(でも実際は心の中で叫ぶだけ)のは、歳をとった証拠だろうか。
 テレビの街頭インタビューで、外国人の方が出てくることが多くなった。とても流暢に日本語を操り、表現方法もとても素直である。少し前は、「ニホンゴッテムズカシイデスネ!!」と外国の方が言っていたが、最近はその言葉を日本人に送ろうか。
(注1)「カネを積まれても使いたくない日本語」内館牧子著 朝日新書
(注2)「走らないのになぜ「ご馳走」」NHKアナウンス室編 新潮文庫

以上


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